結婚白書Ⅲ 【風花】


「それは困るな 余計なことは言わないように 彼らに口止めしとかないと 

じゃあ決まりだな 8月の休暇に行くつもりで話を進めるよ

でも そうなると 夏に帰省できないね 

帰りを早めてお父さんたちのところに寄るか……」


「それなら大丈夫 この前電話したら 兄たちが帰ってくるから手一杯だって

孫の世話に忙しいそうよ 和音さんがお産の間 大輝を預かるんですって

娘より孫の方がいいみたいよ」


「お兄さんのところ 生まれるのもうすぐだね 僕らも早くそうなりたいね 

そうしたら お母さんたちにも歓迎してもらえるんじゃないかな」



その時の朋代の なんとも複雑そうな顔を

暗に子供が欲しいと言った 私の言葉への照れ隠しかと受け取ったが

実はそうではなかったのだと知ったのは 後になってからのことだった





友人の蓮見に旅行に行く旨を伝えると 待っているよとすぐに返事が来た


「全部手配するから任せてくれ 寒さ対策だけは忘れるなよ 

季節が日本と逆だからな 会える日を楽しみにしているよ」



その後 蓮見から連絡がきて ”先にタスマニアに行くから” と 

メルボルン空港で落ち合う約束が出来た




夏真っ盛りの日本を飛び立ってオーストラリアに向かったのは 

8月初旬のことだった






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