secret name ~番外編~
佳乃は出汁巻き卵をつつきながら、考える。
(私も大人になったってことかしら?)
35歳で、大人になったというのもおかしいが。

「あー、でも、あのイケメンのタキシードとか、破くのもったいないかも・・・。」
ブロマイドみたいよね、と。
アイドルではないのだが、そう言われて妙にしっくりくる。

「私も恋したーい!」
「旦那さんがいるのに?」
「それとこれとは別。恋するだけなら、自由よ。」

浮気願望があるわけではなく、ただときめきが欲しいだけらしい。
彼女の感覚はよくわからないが、女性にとってときめきは必要だろう。何かの雑誌に書いてあった気がする。
「胸がきゅんってしたりとかさ・・・もう何年前だって話よ。」
大きなため息を吐きながら、香里は焼き鳥串をつかんだ。
< 79 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop