禁断の果実





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家に帰ってからも、先生が触れた温もりがまだ背中に残っていた。
ベッドに転がって、あたしは枕を両手で抱きしめる。
男の人にあんな風に支えられたのも生まれて初めてだったから
自分でもどうすればいいか分からなくて、その日はご飯も食べられずにいた。









次の日、やっぱりいつもと同じように和泉先生の授業になると
先生に名前を呼んでもらおうと、女子たちは必死になっていた。
あたしもいつものように、先生の後ろ姿をぽーっと見ている。
昨日の今日で、あたしはまだドキドキが治まっていない。


「あぁーっ・・・あたし国語の教科書忘れたよ・・・・」

隣りで小さくごそごそとしていると思ったら
沙絵子がどうやら教科書を忘れたらしい。
後ろに座っていた真海は自分の事で精一杯。


「美咲・・・・一緒に教科書見せてもらってもいい?」

「うん、いいよ」

沙絵子はあたしの机に自分の机をくっつけて、
くっつくように座って教科書に目をやった。
でも、それは沙絵子の作戦だった事にあたしは気づかなかった。
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