禁断の果実
*溢れた気持ち*




この状況はどうしたらいいのかな・・・?

あたしは戸惑いながらも和泉先生に手を引いてもらいながら、跡を付いて行った。


道はどんどん人がいない方向に向かっていた。

先生は何も話さない。


そう言えば、さっきあたしの事・・・美咲って名前で呼んだよね?

酔っ払ってるのかもしれないけど、すごく嬉しかったんだ。


「・・・美咲、家どこ?」

不意に先生が問いかけてきた。

名前を呼ばれるのがとてもくすぐったい。

「あっ・・・・代官山の駅から15分くらいの所です」

「・・・・じゃあ俺ん家と近いな」

そう言うと、先生は駅の方角へ向かった。

先生もこの家の近くなの?

また先生に少し知れた気がして、すごく嬉しかった。

こんな小さな事でも、先生の事だったら何でも知りたいって思ってしまうから・・・。


一人で喜んでいると、駅の近くの公園の前で先生が立ち止まった。

「少し・・・・話そうか?」

「えっ!?・・・・はい」

先生に手首を掴まれたまま、あたしは戸惑いながらも、少し古びた木のベンチに座った。
< 64 / 93 >

この作品をシェア

pagetop