禁断の果実


少し沈黙が続き、誰もいない公園は不気味なくらい静かだ。

さっきからずっと落ち着かないあたしの心臓の音が先生に聞こえないか心配だった。

「・・・・・美咲」

「は、はい」

あたしはハッと我に返って先生の方に目を向けた。

「・・・・・・・・嬉しかったよ、美咲の気持ち」

「・・・・え?」

「俺が他の生徒と楽しそうに話してるのが嫌だって言ってただろ?」

少し忘れかけていた事を、先生の言葉で思い出した。

あたしは頬に熱を感じながら俯く。

「まさか美咲があんな必死に自分の気持ち言ってくれるとは思ってなかったから・・・」


あの時は本当に必死で、自分が何を言ってるかも分からなくて・・・

真海や沙絵子に言われるまで、それがどういう事を意味するのか、気づかなかったから・・・。

「・・・俺は自惚れてもいいの?」

学校では一度も見せた事のない優しい表情で先生があたしを見つめた。

あたしも顔を上げて、先生と目線を合わせる。

鼓動がまた更に速くなり、少し体が震えた。

先生・・・それはどういう意味ですか?

「美咲が俺の事を想ってくれてるって自惚れてもいい?」
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