禁断の果実


「あ、あんまり見るなよ、恥ずかしいんだから」

「あー・・・だからいつも一人で食べてた訳だ」

ニヤニヤと意地悪そうに微笑みながら真海が言った。

「彼女が作ってくれたお弁当?」

沙絵子は何か疑問に思ったのか、杉山くんに問いかけた。

すると、杉山くんは慌てたように否定する。

「ち、違うって!!俺彼女いないし」

「じゃあお母さん?」

「あぁーうち両親死んでいないんだ。だから姉貴と暮らしてる・・・これは姉貴が作ったもんだよ」

少し照れたように頬を赤く染めて、鼻の頭をポリポリ掻きながら杉山くんは言った。

「あっ、あんまり気にしないで!!もう3年も前の話だから・・・」

申し訳なさそうな沙絵子の表情に気づいて、杉山くんは慌ててフォローを入れた。

杉山くんは笑ってたけど、あたしには両親がいないというのが、どれだけ寂しいか分かってる分、何だか悲しい気持ちになった。

あたしの場合、二度と会えない訳じゃないけど、それでも家に家族がいないと言うのは寂しい。

だけど、杉山くんの場合、二度と会えない分・・・それ以上なんだと思うと少し胸が苦しくなった。
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