恋とくまとばんそうこう

「…はい、自習練入ってー。」

今日も顧問の緩い声にメンバーは音楽室の思い思いの場所に散らばる。

「澄香ちゃん、今日胡桃は?」

「あ、今日は私なにも聞いてないなぁ。」

「あ、胡桃ちゃんなんかクラスの子に無理やり引っ張られてたよ。」

胡桃と同じクラスのエリカちゃんがのんびりと答えた。

どうやら胡桃はどこでも人気者のようだ。

澄香はいつもの場所に戻り、歌う合間に今日もまたぼんやり外を眺める。

「…ん?」

なんだかいつもと違うなぁと感じた。

なんでかなぁと少し身を乗り出すと、どうやらグラウンドのフェンス越、軟式野球部のファンの子達がいつも以上に騒いでいるみたいだった。



< 21 / 88 >

この作品をシェア

pagetop