恋とくまとばんそうこう




ズガシャンッ


同じ一年なのに、すでに頭一個分実力を伸ばしてきている滝井がボールがたっぷり入ったカゴを足元に落とした。

これから練習に使った玉を全部拾い上げて試合形式の練習をする。

玉を集めて来るのは一年の仕事だ。

いつもはそんなヘマなんてしない気合いの入っているはずの滝井を不思議そうに松浦が見つめる。

「大丈夫か?」

「あ…ああ。」

一瞬カチンコチンに固まっていた滝井が、慌ててこぼれたボールを拾い始めた。

憎いぐらい整っているポーカーフェイスが、少し崩れている。

松浦は怪訝そうに首をひねった。

「どうしたんだ?さっきの足の指にでも落としたのか?」

「なんでもない。」

早口で応えるのが更に怪しい。

なんかあるなと睨んだ松浦は自身も近くのボールを拾いながらじっくりと彼を観察した。

本人自体になにがあるでもない。だが。

…ん?

勘の良い松浦は視線を校舎上に向ける。

何を言っているのか内容はよくわからないが、音楽室からキャッキャッと女子の声が聞こえてきた。

背中をバシバシと叩いている子と、叩かれながらワタワタと慌てている子。

…んー。

「おい、あれ…。」

滝井に声をかけ、音楽室の方をゆっくり指さそうとした時。

「っ指指すな!」

滝井が珍しく練習意外で声を荒げ、松浦の手をガシッと隠した。

松浦はびっくりして滝井を見つめる。

滝井は辛そうに眉を下げ、

顔を薄っすら赤くしていた。

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