恋とくまとばんそうこう
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…やっぱり信じられない、かも。
俊は、顔を引きつらせてガチンゴチンに固まる彼女を前に、心の中で頭を抱えた。
昼休みに、落とした弁当のスカーフを拾っただけなのに。
それを受け取る彼女と来たら世界の終わりを見たような顔をしていたのだ。
…単純に、凹む。
ため息を隠しながら、前を向いて自分の席に戻った。
…あーもう、かっこ悪。
ズキズキと胸が擦り傷だらけで痛む。
こうなることは、予測していた。
でも、それでも拾ってしまったのは。
どの道後悔するからだった。
拾わず後悔するのなら、いっその事拾って後悔してみよう。
今日は強気だったはずの自分は、見事このなんの破壊力もなさそうな女の子に打ちのめされたのだが。
そんな彼の後ろで、やっと決心したように千葉澄香は目をギュッとつむった。
「あ…り、がとう…。」
消えそうな、声。
目を見開きながら俊はゆっくりと振り返る。
そこには、もう俊の方を全く見ていない、いや、意地でも見ないぞという気配を背負った小さく震える彼女がいた。
下を向いた彼女の首が淡く紅潮している。
次に耳がポッと花が咲いたように赤くなった。
「………っ」
たまらず。
俊は音も立てず前を向く。
それは、…答えだった。
カチンッと肺の奥で音がする。
彼女からのその小さな小さな合図は、俊の中では
大きな大きな爆弾スイッチになってしまったのだ。