恋とくまとばんそうこう
『ねぇ、澄香って、滝井君とのキスって想像したことある?』
っごほっ…っっ!
これまた最新兵器のような不意打ち爆撃に俊は思わずむせた。
心積りが全く出来ていなかったのだ。
何故ならば、ここは砂埃舞い上がるグラウンドではなく、職員室から少し遠い入り組んだ廊下だったのだから。
縦に伸びる廊下と、階段と、靴箱スペースと。
反対側には体育館に繋がるスノコ板が伸びる。
広いスペースは交差点のように不思議と入り組んで、俊が柱の後ろに隠れることは容易だった。
隠れた後に、あー…。と口を抑える。
どうも小さい事をしてしまったような気がして、男として少し情けなくなった。
壁越しに同じようにむせる音で彼は、ハッと顔を上げる。
声の主は、どうやら廊下より暖かい中庭にいるようだった。
そういえば校舎にそってベンチがもうけられていた事を俊は思い出す。
むせていた細く可愛らしい声の主がどうやら落ち着ついたらしく、友人を咎め出した。
「な、ななな…っ。胡桃なにを…っ」
どうやら、“胡桃”という友人は彼女を滝井話題でいつもからかって遊んでいるらしい。
口調と、さっきから聞こえる笑いを我慢したくぐもった声でなんとなく俊にも理解できた。