恋とくまとばんそうこう
「よぅ、ロミオー。」
柔軟中、ガバッと松浦か背中から押すと同時に絡んでくる。
あれ、さっきまで後ろにいた沢内は…ああ、松浦と組んでた奴の所か、と俊は静かに納得した。
「…ロミオってなんだよ。」
ため息混じりに一応聞く。
魅力的で悪い微笑みを口元に宿しながら松浦は顎で校舎を指した。
「だってあそこにいるだろ?ジュリエットがさ。」
…。
松浦が具体的に茶化してきたのは今回が初めて。
俊は仲間であり友人でもある彼を少し警戒した。
なんだってわざわざ。
俊は校舎に一切顔を上げず、相手の出方をみる。
それをどう取ったのか、カッカッカッと松浦は馬鹿笑いした。
「はーっ!怒ったのか?そう睨むなって!」
「睨んでない。」
「元木胡桃。」
「………?」
…胡桃?
突然出て来た聞いたことのある名前に俊は少し首を傾げる。
「…ありゃ違った?じゃあ、…千葉澄香。」
「…!!」
ガバッと柔軟体勢から俊が顔を上げた。
その光景に松浦は満足気に微笑む。
心底楽しいと言った顔だ。
「お、釣れた釣れた。なるほどねーそっちか。これまた目立たない方を。」
俺はどっちかっていうと元木の方かな。華やかで気も強そうで色々面白そうじゃん。…そう軽口を叩く松浦に、俊は戸惑いの視線を送った。
「…結局?」
何が言いたいんだ?そんな瞳で俊は松浦を見上げる。
彼の目的が、何か分からない。
いつもは爽やかフェイスにしまい込んでいる悪い顔が、傾いた太陽をバックに黒く輝いた。
「俺って千葉と同じクラスなんだよねー。」