恋とくまとばんそうこう

「…それが?」

松浦の新しいクラスは知っている。

千葉のも。

しかし、二人が同じクラスという事実がどうだというのだ。

怪訝な顔をする俊に、さっきからの悪人ヅラで松浦は耳打ちする。

「…狙っていい?」

もちろん千葉の方。

そう囁く含み笑いの声に、俊は一瞬カァッと怒りにも似た赤い感情がマグマのように腹の底から浮き上がったが、全力を使ってなんとか抑えた。

じっ…と松浦を見る。

松浦の人間性を。

気持ちを落ち着かせる為に、俊はワザと大きなため息を付いた。

「からかうなよ松浦…。」

およ?と彼は素の表情に戻る。

「ハッパかけるにしては詰めが甘い。」

お前先に元木の方がタイプって言ってしまってるじゃないか。

それを真顔で伝えると、またカラッカラと笑ながら松浦は頭をかいた。

やめてくれ、本当に。

俊はまたため息をつく。

まったく。ボロボロの心臓に悪い。

ポーカーフェイスを取り繕いながらも、俊は内心彼が本気では無かった事に大きく安堵した。

本気だったら…俊は自分がどう対処するのか想像出来ない。

だがまぁ、彼のハッパかけは失敗したのだ。

彼のは。

…次に俊の心を奈落に叩き落としたのは、千葉澄香本人だった。

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