恋とくまとばんそうこう
“あなたが過ぎた過去を後悔するのなら
私はあなたの背中で静かに泣くでしょう。
そしてひとしきり泣いたなら、笑顔でその背中を押すのです。
今すぐに。
行きなさい。
前に進みなさい。
あなたが諦めるまで、まだ間に合うのだから。”
彼女の声で、たどたどしい異国の歌詞が空に放たれる。
それはまるで弾丸のようにまっすぐに俊の中に流れ込んできた。
…行かないと。
俊はただ走った。
行って、何を言うかとか、そんなことはまったく考えずに。
階段を駆け上がる。
彼女の歌が途切れても、走った。
ただ、まっすぐ彼女と対峙したかった。
目を見て、彼女自身に話しかけたかった。
そのいつも伏せられていた瞳でまっすぐ、自分を見て欲しかった。