恋とくまとばんそうこう

「あわっ…わっ、ほんとごめんね…っ血が止まったらすぐ外してね…っ!!それじゃぁ…」

「待って。」

不意に立ち去ろうとした彼女の手を取る。

びっくりして振り返る千葉に、俊は動悸を隠しながら流れに任せて色々喋った。

自分の耳がほんのちょっと周りより良い事。

爆弾の事。

自分の、不甲斐なさの事。

千葉の歌を毎日聞いていた事。


元から何を言おうか考えていなかった為、あまり伝わらなくて歯がゆい思いにさいなまれる。

何故か泣きそうな顔をして首を傾げる千葉が、ふいに目を見開いた。

あ、やっと伝わったのか…。

さっきからどうしようもない動悸と、伝わった喜びと安堵で俊が少し気を緩めて静かに話出したその時、



「………ぅギャーーッ!!」


今まで彼女の口調や態度からは想像出来ないような、ほとんどお化けにあったような叫び声と共に信じられない速さで千葉がその場から消える。

「千葉っ!?」

ぽかん。

ひたすら長い廊下にポツンと残された俊は唖然として彼女が消えて行った先をしばらく見ていた。


「…………ぶっは、…っ」


俊は一人、夕陽が差し込む廊下で静かに肩を震わせる。

口元を隠しても漏れてしまう微笑みに俊は困った顔をした。

薄々気が付いていたけど、…千葉ってちょっと面白い。

ひとしきり笑い終わった後、俊はガバッと顔を上げた。

そこに迷いは一切なかった。


明日、絶対、捕まえる。

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