恋とくまとばんそうこう
帰り道。すれ違った大学生にクスクス笑われたりしたが、自転車にまたがった俊は特に気にならなかった。
いっその事清々しい気持ちで自宅に帰る。
リビングにいた弟に目を向かれたが、気にせず母が置いて行った夕食にかじりついた。
顔を洗う時、それを濡らさないように気を付ける。
後ろからじっと伺う弟が遠慮がちに口を開いた。
「…兄ちゃん、それ取らないの…?」
「ん?ああ。」
あっさり肯定する俊に、あまり身長が変わらない弟が一歩近付く。
「もしかして…」
「ん?」
「彼女…?」
そう言いづらそうに質問する弟の顔は、なんだか複雑そうだ。
弟の仁は俊を少し幼くして、柔らかい雰囲気にしたような風貌なのだが、そんな彼から見ても、いつも凛々しい兄の頬に張り付いたあまりにも可愛い絆創膏がなにかとても異質なものに見えたのだろう。
黙って少し笑う兄に、ジンはまたもう一歩近付いて怪訝そうに絆創膏を見つめる。
「やっぱ、彼女出来たの…?」
しつこく聞いてくる弟に俊はクスクス笑った。
「気になるか?」
「だって、」
チラリと仁が俊を見上げる。
「だって?」
俊は弟の複雑な表情の理由を知った。
「バカップルみたいだ。」
俊は声を上げて笑った。