恋とくまとばんそうこう
「昨日兄ちゃんが謎の彼女とペアルック着てマフラー半分こして寄り添って巻いてべったりくっつきながら相合傘してる夢見た。」
パンを食べながらげっそりとそんな話をする弟に俊は朝から笑わされる。
じゃあ行ってくると扉に立つ兄に、ソーセージを頬張りながら仁が言った。
「それ、やっぱり貼って行くの?」
「ああ。」
「なんで?」
怪訝そうに言う弟の顔には大きく“かっこ悪い”と書かれている。
俊はちょっと苦笑しながら玄関の扉を開けた。
「“本気”を見てもらう為。」
それは、覚悟にも似ていた。
宣言でもあった。
いつも怯えて逃げてしまう小さなカナリアには、それぐらいの意気込みを行動で表すしかないと俊は踏んだのだ。
俺は、もう逃げないよ。
なにか振り切ったような兄に、弟はため息を軽く付きながら手を振る。
「…あんまり恥ずかしい事しないでね。」
来年俺その高校入学するかもだし。
そう言う弟に、俊はニカッと笑って家を出た。