恋とくまとばんそうこう





通学路の川沿いの道を、そのまま彼女の手を引いて歩く。

…勢いでここまで来てしまったが、そもそも手を繋いだままで良かったのだろうか。

彼女的にはどうなのだろうか。

しかし、いざ離せなんて言われても、ちょっと無理かもしれない。


……離したくない。


彼女の手はびっくりするぐらい柔らかくピタリと肌に馴染んだ。

小さいし、なんて指が細いんだと思う。

普段使っていて良く折れないなと俊は要らぬ心配をした。



夕焼けに目に見える世界が全て朱色に染まって見える。

ふと視線を横に落として彼女を見ると、びっくりしたような瞳と目が合い、バッと下を向いて逸らされてしまった。

髪も制服も、全てが柔らかそうな肌も、なにもかも夕陽色。


…ああ。


学校を出ておいて本当に良かったと俊は困ったように微笑む。


このまま、

彼女を誰にも見られないように閉じ込めてしまいたかった。


「今日は、歌、聞こえなかったから。」

ふわりと上がる視線に、俊は出来るだけ柔らかく言葉を響かせる。

「また逃げられたかと思って慌てて走った。」


「…っ、すみません、もう逃げません…。」

冗談っぽく笑うと、彼女はふわわっと慌てて顔を赤らめさせながら下を向いた。


…あーもう、可愛いな。

力任せに抱きしめたくなる衝動を抑え、俊は自分をごまかすように空を見上げる。



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