オレンジジュース~俺と一人の生徒~
おじいちゃんのお葬式を終え、俺達は遺影の前でただ黙って座っていた。
そこに現れた先生。
「よ~!じいちゃんの好きなタバコ持ってきたぞ!」
おじいちゃんは俺の応援によく来ていたから先生とも仲が良かった。
先生はおじいちゃんがいつも吸っていたタバコを1箱持ってきて、おじいちゃんのお骨の前で吸い始めた。
「なぁ、じいちゃん。俺が今日は代わりに吸ってやるよ。」
なんだか懐かしかった。
いつも匂っていた匂いだった。
幼い頃からおじいちゃんの匂いはタバコの匂い。
おじいちゃんの家はタバコの匂い。
誰からともなく、おじいちゃんの思い出話を始めた。
「おじいちゃんはタバコばっかり吸ってたな…」
「おい、和人!ちょっとビール持って来い。」
親父に言われて、俺は冷蔵庫の中からキンキンに冷えたビールを持ってきた。
おじいちゃんが好きだったビール。
それをみんなで飲んだ。
一口だけだぞって言われて、俺と弟もビールを口にした。
涙が溢れそうなのに、自然と笑顔になっていた。
空気を変えてくれたのは、その先生だった。