オレンジジュース~俺と一人の生徒~
俺は深呼吸をして、車から降りた。
お父さんとお母さんは明るい笑顔を俺に向けて頭を下げた。
お姉ちゃんと直の表情を見ていると、胸の奥が苦しくなった。
たくさんのタクシーのライトが俺の車を照らす。
心の中に悲しみを抱えた家族であることを
誰も気付きはしないだろう。
「悪いね。」
お父さんは、荷物を持とうと手を伸ばした俺に言った。
お父さんの声を聞いて、どうしてかわからないけれど、とても気持ちが落ち着いた。
自分の本当の父親のように感じた。
俺は荷物をトランクに入れながら、何を話そうかと必死で考えた。
車の中で明るい洋楽がかかっていた。
窓の外ばかり眺めている直が心配で仕方がなかった。