オレンジジュース~俺と一人の生徒~
「ちょっと外行かないか?」
俺は温かそうな格好をしている直を見て、あの綺麗な夜のゲレンデを見せてやろうと思いついた。
直は、俺の後ろをトコトコと子犬のようについてくる。
「寒くないかぁ?」
俺が振り返ると、直は頷いた。
そして、俺の浴衣の袖の裾をちょっとだけつまんで、歩き出す。
俺は、その手をグイっと引っ張って抱き寄せたい気持ちを押さえ、廊下を歩く。
ガチャ・・・
風が強いせいか、扉が重い。
「うわぁ、寒ぃ~!!」
「先生大丈夫?風邪引かない?」
直は、俺の浴衣の胸元をぎゅっと引っ張り、首にかけていたタオルをマフラーのように巻いてくれた。
「かっこ悪いけど、あったかいでしょ?」
ふふふって笑った直が、天使に見えた。
ペンションの周りをただ黙って歩いた。
話したいこともいっぱいあったのに、今は一緒にいられるだけで幸せだった。