ねぇ、キスして?
そんなあたしを見て



「初めまして、理彩です。この子は娘の愛理」



そう言った理彩さんから、視線を斜め下へと移す。


愛理ちゃんは理彩さんの娘であると同時に、あっくんの娘でもある。


可愛いなぁとは思うけれど、彼氏の娘って……複雑すぎて冷静に見ることはできないよ。


そんなあたしの気持ちがいつのまにか表情に出ていたらしく……



「奈留?」



あっくんはそう言って、心配そうにあたしの顔を覗き込んできた。


今のあたしは物凄く感じが悪い。


あたしがこんな態度でいたら、あっくんの立場がないよ。


にこにこできないのなら、ついてこなければよかったんだ。


それでも心に余裕がないあたしは、やっぱり笑顔を作れなくて。


そんな自分が嫌で嫌で、瞳に涙がたまってきた。
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