黒姫

「瑞姫」
「……起きてる」
「半分以上寝てるけどな」


ようやく仕事を始めた暖房の風に煽られた瑞姫の髪が、朝食の卵トーストにかかりそうになっているのを見て、透は溜め息をついた。
仕方が無い。

残ったパンの欠片を口に押し込むと、立ち上がって瑞姫の黒髪を思い切り引っ張った。


「っ! 痛い痛いってば透!」
「声でかいよ。香奈たちが起きる」
「…………」


悲鳴を上げたら拳骨を喰らって、納得できないという顔をしつつも瑞姫は黙り込んだ。

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