黒姫

頭を押さえて、未だ髪を握っている透を睨む。
痛みのおかげで目は覚めたものの、この扱いは酷い。
瑞姫はむくれて呟いた。


「……髪、切ろうかな」
「駄目」
「えー……」


そういえば、前にも同じ事を言って“家族”に反対された。
主に男性陣に。
里沙は割とどうでもよさ気な顔をしていたが。

と覚醒した頭で考えていると、髪を持ち上げられる感触がした。


「ん?」
「たまには結べば?」
「んー、透がやってくれるなら考える」


髪にそっと触れると、どうやらハーフアップにされているようだった。


「ありがとう」
「礼はいいから食え。先行くぞ」
「え、待って」

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