黒姫

スリッパをパタパタさせながら、1年2組の教室へ向かう。
瑞姫の所属するクラスの、そのドアを開けて、そして一瞬閉めようかと本気で思った。

廊下にまで響いていた喋り声は、瑞姫がドアを開けた瞬間に、ぴたりと止んだ。
痛いほどの視線は無視しようと努めながら、真っ直ぐに自分の席へと向かう。



クラスメートに厭味っぽい言動をしたのだから、風当たりが強くなるのは予想はしていた。
でもどこか、大丈夫だと思っていたのかもしれない。
大丈夫だと、たかが厭味でそこまで態度は変わらないと。



あえて無視するような、そんな態度のクラスメートはいなくなり、ただ敵意だけの篭った視線が瑞姫にぶつかる。

全員が同じような目をしているのは、何とも言えぬ恐怖を煽った。



きっと、そんな目と視線が合ってしまったら、途中でくじけてしまう気がしたから、瑞姫は俯きがちに席へ急いだ。

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