クリスマスの夢 ~絡む指 強引な誘い 背には壁 番外編~
女2人のカラオケ
♦
「クリスマスなのに、2人して仕事って寂しいと思わない?」
閉店作業の清算業務をレジカウンターでしながら、香月は隣で報告書を書く佐伯に問いかけた。
「全っ然。私は明日休みですから」
「えっ!? 何で休み!?」
「知りませんよ、宮下店長が勝手にそうしたんだから」
「それ、間違ってるよ、そのシフト。宮下店長に言おう。私明日休みなんておかしいと思うんですけど!って。申請しよう」
「じゃあ香月先輩が言って下さい。宮下店長の頭がおかしいと思うんですけどって」
「あのね……」
『香月―、香月。誤差ない?』
イヤホンから宮下の声が聞こえた。
「あのー、宮下店長の頭がおかしいと……」
佐伯がイヤホンのマイクを押すふりをして言う。
「やめてよ!!!」
香月は本気で怒った。
「香月―? 誤差は?」
ひょい、と売り場から現れた宮下は、こちらを見ながら地声で聞いた。
「!!! ……なっ、なしです!!」
隣で大笑いする佐伯。
「何だ、佐伯?」
宮下はちら、と佐伯を見ながら聞いた。
「明日クリスマスで休みなんて惜しいなって思ってるそうです。売上上げたいのに嘆いてます」
香月はここぞとばかりに責める。
「ああ、あれな。悪いな」
冗談と知ってか知らずか、宮下は真顔で答えた。
「前後の関係があって、どうしても明日を休みにしないと組めなかったんだ。悪かったな、佐伯」
「いえっ、全ッ然!!!」
真顔に合わせて真顔で首をふる佐伯。
香月は隣で必死で笑いを堪えた。
それに気づかず、カウンターに入って行ってしまう宮下が十分に離れてから、香月は佐伯に
「今日カラオケ行こ」
と提案した。
「無理です」
この即答、いつかも聞いたな……。
「なんで?」
「えーだって先輩、クリスマスに女2人でカラオケなんて寂しすぎると思いませんか?」
「じゃあ誰か呼ぶ?」
「えー……、西野さんも来ないと思いますよ。明日朝一だし」
「じゃあ2人でいいじゃん。明日は私朝ちょっと遅いし」
「えー……突然、強引、自己中、自分勝手。典型的なB型」
「私ABだよ」
「あそっか。B強すぎですよ」
と、佐伯が言った時点でどこのカラオケに行くかも決まっているのである。
それが2人のいつものやりとりにすぎないのだ。
予定が決まるなり、高速で業務を終わらせ、タイムレコーダーを押して、外に出る。
「寒いー!!! 車で来て良かった―」
香月は己の軽乗用車の助手席に佐伯を乗せて、発進する。再びくだらないことを言い合いながら、10分で到着したカラオケ店に入る。
「クリスマスなのに空きがあって良かったね」
ソファに腰かけながら香月は嬉しそうに言ったが、佐伯は
「時間的に11時なんて、みんなホテルとか行ってるんじゃないですかね」
と冷ややかなコメントをした。
「あのねー、世の中カップルばかりで構成されとるんじゃないんだよ、君」
「だとしても、少なくとも私はカップル側でありたいです!」
「そんなのさあ、言わなくても、みんな気持ちは一緒じゃん? あ、飲もうか今日」
再び突然香月は提案する。
「車は?」
妙に慎重な佐伯だ。
「飲まない佐伯が送るか、代行で帰る」
「はい、代行決定―」
「えー……お金、足りるかな」
財布を確認すると、1万円がすぐ目につく。
「あるある。よしっ、佐伯も飲む?」
「うーん、とりあえず、歌いましょうよ」
「クぅリ、スマスキャロルがぁ~」
リモコンディスプレイで曲名をリサーチしながら香月は歌い始める。
「先輩、マイク持ってからでいいですよ」
「クリスマスなのに、2人して仕事って寂しいと思わない?」
閉店作業の清算業務をレジカウンターでしながら、香月は隣で報告書を書く佐伯に問いかけた。
「全っ然。私は明日休みですから」
「えっ!? 何で休み!?」
「知りませんよ、宮下店長が勝手にそうしたんだから」
「それ、間違ってるよ、そのシフト。宮下店長に言おう。私明日休みなんておかしいと思うんですけど!って。申請しよう」
「じゃあ香月先輩が言って下さい。宮下店長の頭がおかしいと思うんですけどって」
「あのね……」
『香月―、香月。誤差ない?』
イヤホンから宮下の声が聞こえた。
「あのー、宮下店長の頭がおかしいと……」
佐伯がイヤホンのマイクを押すふりをして言う。
「やめてよ!!!」
香月は本気で怒った。
「香月―? 誤差は?」
ひょい、と売り場から現れた宮下は、こちらを見ながら地声で聞いた。
「!!! ……なっ、なしです!!」
隣で大笑いする佐伯。
「何だ、佐伯?」
宮下はちら、と佐伯を見ながら聞いた。
「明日クリスマスで休みなんて惜しいなって思ってるそうです。売上上げたいのに嘆いてます」
香月はここぞとばかりに責める。
「ああ、あれな。悪いな」
冗談と知ってか知らずか、宮下は真顔で答えた。
「前後の関係があって、どうしても明日を休みにしないと組めなかったんだ。悪かったな、佐伯」
「いえっ、全ッ然!!!」
真顔に合わせて真顔で首をふる佐伯。
香月は隣で必死で笑いを堪えた。
それに気づかず、カウンターに入って行ってしまう宮下が十分に離れてから、香月は佐伯に
「今日カラオケ行こ」
と提案した。
「無理です」
この即答、いつかも聞いたな……。
「なんで?」
「えーだって先輩、クリスマスに女2人でカラオケなんて寂しすぎると思いませんか?」
「じゃあ誰か呼ぶ?」
「えー……、西野さんも来ないと思いますよ。明日朝一だし」
「じゃあ2人でいいじゃん。明日は私朝ちょっと遅いし」
「えー……突然、強引、自己中、自分勝手。典型的なB型」
「私ABだよ」
「あそっか。B強すぎですよ」
と、佐伯が言った時点でどこのカラオケに行くかも決まっているのである。
それが2人のいつものやりとりにすぎないのだ。
予定が決まるなり、高速で業務を終わらせ、タイムレコーダーを押して、外に出る。
「寒いー!!! 車で来て良かった―」
香月は己の軽乗用車の助手席に佐伯を乗せて、発進する。再びくだらないことを言い合いながら、10分で到着したカラオケ店に入る。
「クリスマスなのに空きがあって良かったね」
ソファに腰かけながら香月は嬉しそうに言ったが、佐伯は
「時間的に11時なんて、みんなホテルとか行ってるんじゃないですかね」
と冷ややかなコメントをした。
「あのねー、世の中カップルばかりで構成されとるんじゃないんだよ、君」
「だとしても、少なくとも私はカップル側でありたいです!」
「そんなのさあ、言わなくても、みんな気持ちは一緒じゃん? あ、飲もうか今日」
再び突然香月は提案する。
「車は?」
妙に慎重な佐伯だ。
「飲まない佐伯が送るか、代行で帰る」
「はい、代行決定―」
「えー……お金、足りるかな」
財布を確認すると、1万円がすぐ目につく。
「あるある。よしっ、佐伯も飲む?」
「うーん、とりあえず、歌いましょうよ」
「クぅリ、スマスキャロルがぁ~」
リモコンディスプレイで曲名をリサーチしながら香月は歌い始める。
「先輩、マイク持ってからでいいですよ」