二手合わせ
時計なんざ、大名でも上の奴等しか持てねえ代物だ。
なのに、あのガキは腕に巻き付いているものを『時計』だと言った。
…あんなちっせえ時計なんかあんのか?
けど、針が一定の速さで音を鳴らすソレは、一度見たことがある『時計』にソックリだ。
「大名の娘…なわけがねぇな」
「そやなぁ。髪も短いし、なんつうても、あの肌の露出具合はなぁ。女とは思えへんもん。体つきで分かるんやけどな!」
「変態だな」
「ちょい!」
同感だが、それを口にしたら変態にしか見えねぇ。
変態め。
「とりあえず、無下にも出来ねえわな、あんなもん持ってんじゃあな」
「…やな、監察続行かー。眠いわー。早よう吐くもん吐いてくれんかな」
「強情…っつーよりは、意地っ張りだな」
「春の夜は寒いんやけ、夜の監察は嫌いやな。昼夜逆転にも程があるで、俺の生活」
「まあアレだ、耐えろ」
「慰め方が雑いな!」
そして、そのあとは雑談を少しして、山崎はガキの監察のために退出した。
やっと寝れるな。
俺は煙管の火を消して、文机の端に置き、布団を敷いて目を閉じた。