二手合わせ



顔に何かが吹きかかる。
永倉さんの吐息…たぶん。

そんなに近くに永倉さんの顔があると分かって、息を飲む。


緊張していると永倉さんが再び喋り出す。


「目」

「え?」

「俺と目、合わせてみろ。部屋に入ったときからこっちを見ているくせに視線がぶつからない。目の焦点も合ってない。見えてるなら合わせてみろ」


洞察力が凄い、とか感心してる時じゃない。

きっと今は朝で、明るくて、私の世界だけが真っ暗。

目を合わせてみろ、なんて
無理。
だって声の発信源と吐息のおかげで顔が真正面にあるのは分かる。

でも、目の位置なんて…。


私は首を横に振って、それが出来ないこと、目が見えてないことを示す。


一難どころか二、三難くらいも去ってないのにまた一難て。

笑えない。



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