二手合わせ



山崎さんにゆっくりと手を引かれた。

そして歩き出す。


……怖い。


「まぁ着替えなあかんのは事実やけん、とりあえず俺の部屋に行こか」

「……っ、」


山崎さんがカラリと障子を開け、私を導いて、部屋に向かう。

どうしよう。どうしよう。

ゆっくり、なのは、山崎さんが私に配慮してくれているからで

それは解っている、のに

目の前に壁があるような、妙な圧迫感を感じずにはいられない。

その壁にぶつかりそうで、怖い。


手を引かれているから不可抗力で歩くしかないが

覚束無い歩きになっているのは自覚できる。


「恵梨ちゃん、怖いんか?」


山崎さんが立ち止まって、私に訊いた。

私は無言で頷く。


「そか、そりゃ、しゃあないわ。でもな、治らん可能性も考えな。見えへん状態で歩けるようになっとかんと、後々苦労するのは恵梨ちゃんや。だけん、今のうちに慣れとけ」


諭すような
少し、叱るような
そんな口調で
でも軟らかい声色で言われた。



< 41 / 77 >

この作品をシェア

pagetop