二手合わせ
山崎さんにゆっくりと手を引かれた。
そして歩き出す。
……怖い。
「まぁ着替えなあかんのは事実やけん、とりあえず俺の部屋に行こか」
「……っ、」
山崎さんがカラリと障子を開け、私を導いて、部屋に向かう。
どうしよう。どうしよう。
ゆっくり、なのは、山崎さんが私に配慮してくれているからで
それは解っている、のに
目の前に壁があるような、妙な圧迫感を感じずにはいられない。
その壁にぶつかりそうで、怖い。
手を引かれているから不可抗力で歩くしかないが
覚束無い歩きになっているのは自覚できる。
「恵梨ちゃん、怖いんか?」
山崎さんが立ち止まって、私に訊いた。
私は無言で頷く。
「そか、そりゃ、しゃあないわ。でもな、治らん可能性も考えな。見えへん状態で歩けるようになっとかんと、後々苦労するのは恵梨ちゃんや。だけん、今のうちに慣れとけ」
諭すような
少し、叱るような
そんな口調で
でも軟らかい声色で言われた。