二手合わせ
引っ張ってもらってるから、大丈夫、大丈夫。
前には何もないはず。
どうしても前に壁があるような圧迫感を、無視して
いつもの感覚を思い出して歩くようにした。
……山崎さんはきっとスピードを緩めているけれど、それでも速く感じる。
「もう少し…せやな、あと十歩歩いたら曲がるで」
「……はい」
何度か転けそうになったり、山崎さんとぶつかったりしながら、漸く部屋に着いた。
山崎さんと繋いでいた手を放す。
「うっし、着替えんで!ちょい待ってな?」
山崎さんはそう言って、カラリと、おそらく物置の襖を開けたようだ。
「ほんまにめかしこんだら副長に怒られるやろうから、…化粧はせんでええか、今回は。とりあえず着物や、着物。…これでええか」
どうやら着物は山崎さんが決めたらしい。
私は軟禁されている不審者扱いだし、目が見えないから選ばせてもらえないのは当然だけど。