たぶん恋、きっと愛
「よし、決算書つくろ」
「お~、よろしく頼むね。多分すぐ凱司来るし、雅ちゃんパイ焼くって言ってたから」
もう考えない事にしたのか、ノートパソコンの電源を入れた昌也の、赤い髪が痛んでいるのを見ながら。
鷹野は時計を見上げた。
「じゃ、俺、仕事戻るから」
そうか、昌也は15の時は童貞か、などと思いながら鷹野は。
少し気掛かりそうにドアの向こうを見やり、昌也を振り返った。
「昌也、雅ちゃん戻って来たらさ、今日の帰りは20時頃で、ごはん要りますって言っといて。訊かれてたのに言い忘れた」
「あの子がメシ作んの!?」
「うん、上手だよ」
じゃあね、と軽く手を振って廊下に出た鷹野の耳に。
凱司の苛ついた声が、微かに聞こえた。
抱きしめて、俺“も”悪かった、大丈夫だから、って言えば良いだけなのになあ。と。
脱いだばかりの靴を、履いた。
雅の扱いは、わかってきた。
なだめ方も、誤魔化し方も。
あまり泣かないといいんだけど、と後ろ髪を引かれる思いで。
鷹野は玄関を、出ていった。