たぶん恋、きっと愛
鷹野が、誰かと丁寧に話をしている。
客商売だけあって、口調は滑らかだ。
「あ、雅ちゃん?」
電話に雅が出たのか、途端に声に甘さが増した鷹野に、苦笑する。
「なに、今の喧嘩腰の男は」
くすくす笑いながら話している内容に、凱司は。
男だったか、と思う。
この前のライブん時の奴等と一緒…って言うと…アレか…“先輩”か。
わざと、かっさらうように引き離した。
お前にはやらない、とばかりに雅を連れ去った。
さも心配そうに雅を見る目が、気に入らなかったから。
…ほんっとに俺、なにしてんだろな…と。
凱司は自嘲気味に頭を振って、山になった灰皿を、流しに運んだ。
「じゃあ、15分後に」
電話を終えた鷹野が、凱司を振り向いて、愉しそうに口を開いた。
「凱、あんたに会いたいってさ、雅ちゃんの先輩が」
「はあ? なんで」
「なんでって…雅ちゃんを好きなんだろ、先輩がさ」
駅まで送ってくれるって。
どんな設定でかは、わかんないけど雅ちゃん、先輩振ったみたいだよ?
淡々と喋る鷹野が、唇の端を上げて、薄く笑った。