たぶん恋、きっと愛



いつもの道を、駅前まで歩いてきた。


「あれ? なんか人数多い」


吹き出すように笑った鷹野の視線の先には、雅の他に、三人。


「どれが“先輩”?」

ほどほどに身長のある鷹野も、凱司の隣を歩くと、小さく見える。


「あー、雅と…揉めてる奴」


確かに、雅が何かを必死に訴えているように、見える。

対する男は、そっぽを向き、雅の言葉を聞いているようにすら見えない。



「あっ!雅来た!こないだのバンドの人来たよ!」

「マジだ!つーかでけぇ!」


聞こえてる聞こえてる、と鷹野は苦笑した。

無関心を装う通行人も、チラ、と視線を寄越して、ほんとだ、背高い、と凱司を二度見していく。



「鷹野…黙らせろ」

「はいはい」


横断歩道を挟んで、こちらを向いて騒ぐ彼らに、鷹野は。
唇に人差し指を当てて、微笑んだ。


「やーっ!何々!? しーってしてるよ!チョー美人~」

「加奈子“チョー”とか死語じゃね!?」


ますます色めき立った、横断歩道の向こう側に。

鷹野が弾かれたように、笑う。

「ありゃ駄目だ」

「酔ってんのか、あのガキどもは」



 
< 147 / 843 >

この作品をシェア

pagetop