たぶん恋、きっと愛
「雅は…あなたを好きだと…」
「言ったのか?」
「言っ…てないすけど!」
凱司が居るから駄目だと、そう言われた。
大切な人だから、と。
「で、諦めきれなくて俺に会いに来たのか? 何の為に? 納得いかねぇなら雅の方をなんとかすりゃいいじゃねぇか」
先を歩く鷹野と雅は、ずいぶん先に行っている。
雅はたまに後ろを振り返り、気掛かりそうに見ているけれど、その度に鷹野に前を向かされて。
決して話の聞こえる距離にはならなかった。
「あなたは…雅を好きなんですか?」
「ああ」
あまりにあっさり、肯定した凱司に黙りこんだ柳井も。
数歩前を歩いていた田鹿と加奈子も。
思わず先頭を歩く雅を、じっと凝視した。
「じゃあ…なんで雅は彼氏いないなんて……」
「あーもう、うるせぇな。お前はお前でやればいいだろが。俺が買ったのは体じゃなくて労働なんだから好きにすればいい」
どうせ、宣戦布告みたいなつもりなんだろ? 好きにやれ。
面倒そうに手を振る凱司に、思わず柳井は突っ掛かった。
「もし!もしも俺と付き合う事になったらどうすんですか!?」
虚を突かれたのか、凱司は一瞬動きを止めたけれど。
すぐに、不敵に笑った。
「ならねぇよ 」
むざむざとくれてやる気にはならないし、手なんか出してみろ、…沈めるからな。
「それでもいいんだろ? わざわざ俺に会いに来たくらいなんだから」
だったら好きにすればいい。
雅が自分で離れていく分には、追わねぇから。
不敵な笑みは、威圧に変わり、柳井を黙らせた。