たぶん恋、きっと愛
にっこりと、テーブルを挟んで凱司の前に立った。
雅は、鷹野に紅茶を淹れようとキッチンに立ち、こちらの話は聞こえにくい筈だ。
「…噛みついたの、凱?」
「……………」
あからさまに面倒そうな顔をした凱司に、鷹野は眉をひそめた。
「………まさか挿れた?」
「…こっちだけだ」
開いて見せた、右手。
くらり、と一瞬よぎった激しい嫉妬に、目眩がした気がしたけれど。
鷹野は深く、落ち着かせるようにため息をついただけだった。
「見えるとこに痕付けるなって凱司が言ったんじゃないか」
「……目測を誤った」
「噛むとかあり得ねぇよ…可哀想に」
「…可哀想なのは俺だ」
「……」
「…………」
…ああ…、きっと。
きっと凱司も。
本気で我慢したんだ。
わかっていた所で、やるせない事に変わりはない。
「……バチ、だと思うよ?」
意地悪く呟けば、凱司は珍しく素直に、だろうな、と苦笑した。