たぶん恋、きっと愛
そして、もうひとつ、雅が落ち着いていられない原因があった。
「髪は、それでいいのか」
「はい。…おかしいですか?」
綺麗にブラシをかけた。
…鷹野が。
そのあと、いい匂いのクリームを馴染ませて、櫛を通した。
…鷹野が。
さらさらと、ただ自然のままに。
切った前髪が、雅が動く度に上がり、ひどく愛らしい。
愛らしい、などと思ってしまった事を恥じるように視線を外す凱司が、珍しく黒のようなグレーのような色合いのスーツを着て、煙草をくわえていた。
「………」
「なんだ」
「……なんでもな…」
「言え」
じろり、と睨まれれば、雅は途端に狼狽える。
こんなの、ズルい。と呟いて、俯き加減に目を泳がせた雅は、後ろに流された金髪をちらりと睨んだ。
「何がズルい」
「そっ…んなに悪そうな癖にカッコいいとか、ない!」
泣きそうに叫んだ雅に、凱司の動きが止まった。
「…それは、褒めてんのか?」
苦笑混じりに煙草を押し消した凱司は立ち上がり、行くぞ、と雅の髪を掻き回した。