たぶん恋、きっと愛
きっちりと、畏まる。
宇田川家での形式めいた挨拶は、少なからず雅を怯えさせた。
雅の籍を、預かって貰うことに対する、お願いの意味の挨拶かとばかり思っていたのに、よくよく宇田川の口上を聞いていれば。
逆である響きを含んでいるように思えた。
テレビで見た時代劇の、殿から世嗣ぎの養育を任された、傳役。
雅にはそんなふうに、思えた。
静かに、不可思議なリズム感で決まったような台詞を交わす宇田川と凱司を、あまり見てはいけない気がして、雅はずっと、自分の膝を見つめている。
宇田川がスーツであるのはいつもの事だけれど、後ろに座る友典までもが、制服ではなく、スーツを着ている。
由紀に至っては、和服だ。
全てが堅く粛々と。
雅はただ姿勢を正し、指をつき、凱司の促すままに。
「須藤、雅です」
と、一言、頭を下げるのが精一杯だった。