たぶん恋、きっと愛


大人の世界って、こうなんだろうか。

何か大きなものに呑み込まれた気がして、怖い。

全員が、全然別の人に見える。



決まったタイミングなのか、揃って深く頭を下げた宇田川家に対し、凱司は鷹揚に、頷くような礼を返す。

自分の事であるのに、全く理解出来ずに、内心怖くて堪らない雅は、そっと凱司の背ににじり寄り、顔を見上げた。



「……泣くな、終わりだ」

「…終わった?」



くく、と。
宇田川と、妻の由紀とが忍び笑いを漏らす。


「凱司さん…雅さんに流れを説明しませんでしたね?」



「し…なかったか?」


こくん、と頷いた雅は、小さく凱司の袖を、掴んだ。



「まあ、ただの形だからな」


そんなに怯えさせるような事をしただろうか、と悩むくらいに袖を掴んで離さない雅が、ゆっくり探るように、宇田川と、由紀、友典とを。

順に見つめて、よろしくお願いします…と、小さく呟いた。
 


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