たぶん恋、きっと愛
部屋を変え、コーヒーが出されても、雅は凱司の傍を離れなかった。
「…すっかり怯えさせてしまいましたね」
困ったように笑う宇田川が、雅を覗き込み、友典を振り返った。
あなたなら、どうしますか?と訊く父親に。
友典は僅かの後に立ち上がり、無言で父親の背を押した。
「………髭を」
「…は?」
「…触らせてやれば、…笑うと思う」
昨日は、佑二の与えたチョコレートで笑った。
そして、鷹野一樹に喜ぶ。
その前は、プリンだった。
多分、雅は目先の好きなものに、弱い。
「…………」
宇田川は、友典と凱司と雅とを見比べ、妻を振り返った。
「章介さんの、お髭がお好きなの?」
愉しそうに微笑む由紀に、雅が小さく頷いたのを目の端で捉えた。
「が…凱司さん…」
「…試してみたらいい」
明らかに笑っている凱司は、我関せず、とばかりに、コーヒーに口をつけた。