たぶん恋、きっと愛
「…さ、わりますか?」
「…そ……そんな…改めて言われたら触れませんッ!」
ますます凱司の腕に張り付いた雅に、宇田川は息子を振り返った。
「振られましたが」
「……」
「章介さんのお髭、剃ってしまったら?」
変わらずに愉しそうに微笑む由紀がそう言えば、雅は慌てて顔を上げた。
「剃っちゃ駄…!…目…です……」
「まあ」
ころころと、穏やかに声を上げて笑う由紀に、雅の頬に赤みが差した。
凱司は苦しそうに笑いを堪え、友典を手招いた。
「お前、殴られたって?」
鷹野の言った通り、たいした事はなさそうだが、頬骨の上が、青くなっている。
「万が一、手に余るような事があれば、いつでも呼べ」
無いと思うけどな。と、凱司は指を伸ばし、友典の青くなった箇所を、撫でた。
「雅は心配性だぞ。お前が殴られたと、こっちは宥めるのに必死だ」
くく、と笑う凱司は、何も聞いていなかったのか、眉をひそめている宇田川に向き直り、目線だけで、怪我をさせて済まなかった、と。
頭を下げた。