たぶん恋、きっと愛
どこで見たのか、と、不躾にも泣き顔を見つめてしまっていることに気が付き、目を僅かに逸らした。
「…ごめんなさい、お金、持ってないんです」
そんな、小さな声を聞いて、思い出す。
つい、もう一度泣き顔を見つめ直し、ああ確かにそうだ、と頷いた。
「ならば、場所を空けましょう。とにかく、お座りなさい」
理由は解らない。
解らないが、泣いている見知った少女を、どこに行くのかも解らないまま、歩かせるなどしたくない。
前回に会った時には、笑顔の可愛いひとで。
共にいたひとまでもが、幸せそうに笑っていたのだから。
「…はい」
ポニーテールに結い上げられた髪は、とても溌剌としている。
なのに、それにそぐわず捨てられた子猫のような危うさに。
向かいの美容室にいるはずの彼は、呼ばないほうがいいのだろう、と。
白髪の混じった髭の下で、穏やかに微笑みかけた。