たぶん恋、きっと愛


に、と笑う息吹の腕が、雅の首の後ろに巻き付く。



「…あんた、一樹好きだろ」

「……うん」

「俺の目が、一樹に似てたか」

「…ん」


「すげぇ泣きそうな顔して呼んだもんな」

くくく、と笑う息吹に、雅の目が僅かに揺れ、まるで心を許したかのように、微笑んだ。



「似てるだけで、鷹野さんじゃないのにね」


「…俺だって“鷹野”だぜ?」


すげぇ興奮した、と。

まるで恋人同士のように。

額を寄せて笑う雅が、首の後ろに突き付けらた刃先を、ゆっくりと掴んで、身を起こした。



「ごめんなさい、価値なくて」


思いのほか、乱暴ではなかった息吹。

息吹は雅越しに、弟を見る。
雅は息吹越しに、鷹野を見た。


奇妙な感覚は、血の滲んだ雅の左手に、プラチナを取り戻した。


全てをシャットアウトしたかのような、非現実的な感覚が薄れてくるのを恐れるように。


雅は、ひと房残った長い髪を、息吹の手に握られたままのそれで躊躇なく切り取ると、すっくりと。

顔を上げて、立ち上がった。
 


< 812 / 843 >

この作品をシェア

pagetop