あたしが見た世界Ⅲ【完】
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「どっか行くの?朱雀」
隼人に呼び止められて、俺の心臓はドキリと跳ねた。
いや、別に悪いことをしようとしているわけじゃないけど。
「なんとかメイトとかいう場所に行くんじゃねーの?」
梨斗が本を読みながら言う。
「梨斗が本読むとか珍し。明日雨じゃ」
「何でだよ」
俺がそう言うと、すこし……じゃないな。
かなり苛ついている梨斗がすかさずツッコんだ。
読書の邪魔をされたくないらしい。
「何読んどん?」
梨斗が夢中になっている本が気になる。
こう見えても俺は本が好きだ。
仕事の休憩の時とかにも読むし。
……だから俺、職場で友達と呼べる人が一人もいない。
っていうのは嘘で~……ってまぁ、この話はいいか。