あたしが見た世界Ⅲ【完】
「……マクベス」
梨斗が一息ついて言った。
――……まくべす…?
初めて聞いた単語だ。
「なんそれ?」
「あれ?朱雀、本が好きなのにマクベス知らねーの?」
梨斗がしおりをはさんでかしげる。
――!
キューピッドが俺の心臓を射ぬいた!
「梨斗、押し倒してもi――いでっ」
ベシッという音と共に地味に頭がじんじんと痛む。
「冥王星に帰れ、腐男子」
「遠っ」
後ろを向くと、不機嫌な様子をした柚子と、漫画を持って「ここの角っこでやる手もあったで」と、何やら危ないことを言っている慧がいた。
そして柚子の手には〝便所〟と書かれたスリッパが。
どうやらそれで俺を叩いたらしい。
――……なんてべたな…