超能力者は暇ではない
「調べてみたらこの及川って人、まだ秋花女子大学にいるみたいですよ!ただ……この大学の場所が複雑なんですよねえ……ここからバスと電車で三時間かかります。しかもそこから更に歩きかタクシーで移動という……」
「うげっ!そんなに遠いのかよ……」
京が頭を抱えて項垂れる。
「でも、及川さんの実家がこの近くにあるそうです。多分警察の方に聞けばわかるんじゃないかな……」
「そうだな……じゃ、そうするか」
京は椅子から立ち上がると、電話の横に置かれていたメモを掴んだ。
「よし、じゃあ今から役割分担をする!」
京の言葉にリオが不安そうな顔をする。
「えっ、今回は別行動なんですか!?」
「ああ、三人で同じ人に会って同じ話を聞いてちゃ時間の無駄だからな。それぞれ別の所に行って話を聞いたほうが情報が入るのも早い」
京はそう言うと、久保に及川の所へ行くよう指示した。
「了解。聞いてきてほしい事とかある?」
「とりあえず、あのあとがきに書いてあった『人消』についてと、『人消師』について何か知ってるかは絶対聞いてこい」
「オッケー!じゃあ早速行ってくる!」
久保は財布をポケットに突っ込むと、誰かに電話をかけながら玄関へ向かった。
恐らく警察に連絡でもしているのだろう。
「リオ、おまえはどうする?また虎太郎の所に行くか、野口に話を聞きに行くか……」
「京様はどうするんですか?」
「俺は小高が通ってた可能性の高いスナックに行こうと思ってる。店開くのは夕方からだから居るかわかんねーけど」
「じゃあ僕も一緒に行きます」
リオの言葉に京が頭を掻く。
「いや、あのな、話聞いてた?俺らには時間がねーんだよ。一度に仕入れる情報増やさなきゃ相手に負けるぞ」
「だって僕、まだあんまり超能力使えません!それでもし犯人に襲われたら……京様のフォロー無しに戦える気がしません!」
さすがの京も苛ついてきた。
京はリオを睨みつけると、冷たい声で言った。
「じゃあ今ここで俺が死んだらどうする?逃げるのか?俺がフォローしないと戦えない?甘ったれた事言ってんじゃねーよ。俺はおまえに……」
ここまで言った所で、リオが京を殴り飛ばした。
リオに初めて殴られた京は、ぽかんとしたままリオを見た。
リオの目には涙が溜まっている。
「どうせ僕は役立たずですよ……!でも京様の力になれたら嬉しいから、京様のそばにいたいだけなのに……もういいですよ!!」
そう叫ぶと、唖然とした京を残したまま外へ飛び出していった。
「ったく……人の話は最後まで聞けっつーの……あいつ性格まで女みたいだな……」
殴られた頬を押さえながら立ち上がり、ぶつぶつと文句を言う。
さっきまで晴れていた空は、いつの間にか曇り始めていた。