”オモテの愛” そして ”ウラの愛”

だが元々、縛られるのが嫌いな性格だ。

なんせ小学生の頃から通信簿に書かれていたコメントは、協調性を持ちましょう、だ。

涼にとって西園寺というのは牢獄でしかなかった。

当主の仕事も、社長業も、自分には向いていないと思っていた。

興味も無い。

毎日が苦行だった。

屋敷に戻って綺樹の顔を見るのだけが、息抜きだった。

ウルゴイティ家の当主になっても、西園寺夫人となっても、出会った時から全く変わらない、そっけない表情を浮かべ、淡々とした様子を見ると、ほっとした。

西園寺の名前を聞いて目の色を変えることもないし、親しくなって何かねだり始めることもない。

たとえ体関係が無くても、妻として屋敷に居てくれるならそれでいい。

そう思おうと、いや、思い込もうと努力した。
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