”オモテの愛” そして ”ウラの愛”

そう。

抱きたくてしょうがない。

あの肌に触れ、くちびるを合わせ、繋がりたい。

だが綺樹の方はそのような雰囲気を一切排除していた。

西園寺夫人として、それなりに忙しいスケジュールと、家の切り盛りを淡々とこなし、空いた時間は思う存分、読書に没頭している。

涼が家に帰ってきたら、何かのタイミングで世界展開についてのアドバイスを一つする。

ビジネスパートナーとしての務めのように。

限界だと思った。

綺樹の寝室へ押し入るのは、時間の問題だ。

でも綺樹は望んでいない。

どこでボタンを掛け違ったのか。

綺樹はこっちを愛してくれているはずなのに。

今ここで無理矢理に体の関係を持ったら、間違いなく最悪な状態になるのは、十分わかっている。
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