”オモテの愛” そして ”ウラの愛”
そのフェリックスは当主補佐という役目らしかった。


「補佐?
 監視だろ」


じろりとにらむと、鼻先で笑われた。

監視であると同時に教育係でもあった。


「もう一度」


フェリックスはそっけなく駄目出しをした。

綺樹のこめかみがぴくりと動く。

その日は、ロングドレスに、10センチのハイヒールを履き、歩き方をしごかれていた。

かえこれ2時間、ソファーに座っているフェリックスの前で、行ったり来たりを繰り返している。

綺樹は客を拾うコールガールの気分だった。
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