正夢絵本
「ほらこい!」
「ってーな!引っ張んな!」
電車から降りた沙耶は先ほどの痴漢らしき人とそれを捕まえたであろう男性、更にその被害者ともいえる女性がいるほうをじっと見つめた。
やはり夢通り二人とも沙耶の予想を裏切る若者だった。まぁ、痴漢は相変わらず柄が悪い人だったが。
ドクンッ
一瞬嫌な感じが沙耶を襲った。
(な、なんだろ…何でこんなに胸騒ぎがするんだろ…)
このあと"あの事故"が起こる事を知っているからかなと思い身震いすると改札口に向かおうとした。
しかしそこで足が止まってしまった。
(何で私改札に向かおうとしてるの…?事故起きるの知ってるんだから助けてあげればいいじゃない)
心の葛藤をするがいまいち助けようという考えに持っていけない。
何で?何で助けてあげないの?あの人が悪い事したから?柄が悪いから?自分には関係ないから?
ドクンッ
「……まっまさか…!」
沙耶はあの三人がいるほうを振り向き走り出そうとした。しかし足に急に重みを感じその場から動けなかった。