正夢絵本
勢いよく駆け出そうとしたのでまるで何かに躓いたかの様に前のめりになり体勢を崩してしまった。


「っ!なんで!?」


体勢を立て直して急いで走ろうとしているのに思うように早く走れない。まるで自分の意思が思うようにいかない夢の中のように。


(急がなきゃ!急いで助けなきゃ!そうしないと…!!)


沙耶は思い出したのだ。自分が夢で望んだ事。いや、実際は望んだ覚えはないのだがもしあの時私が一瞬思った事をあの黒い本が私の望みと勘違いして叶えてくれたなら――!



――まったく、ああいう人を一掃して欲しいわ。――



(違う!あれは望みじゃない!)


沙耶は走った。今自分の中での最高速度であの三人のもとに走った。


(動け!動け!動け!動け!動け!動け!もっと早く!早く!早く走るんだ!!)


ようやっとの思いであの三人に近づく事が出来た。
しかしよく見ると三人は既に階段の前に差し掛かり、階段の上のほうを見れば大変そうに手作業で自動販売機を上のほうへと運んでいる作業員が目に入った。


「あぶなーい!!!!」


沙耶は力の限り叫んだ。
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