正夢絵本
人々が徐々に集まり始めて慌ただしくなってきた。


「な…んで?…助けた筈…なの…に……!!」


沙耶の目の前では男性が血まみれで苦しそうにうめき声を出している。


その時沙耶の脳裏にあの本の一文がよぎった。



――1度みてしまった夢は訂正できない。――



「……だから…現実になっちゃったの?」


ようやく駆けつけた救急隊に下敷きになった男性は救出された。どうにか意識は繋がっているようだがかなりつらそうである。何回か吐血もしていた。

ずっと見ていた沙耶の目からは涙が零れていた。


(あ…私が…あの時…あんな事…思わなければ…)



――目が覚めた時に夢の内容を忘れていた場合でも夢の中での望みは有効である。――



沙耶の頭の中ではあの本に書いてあった事が繰り返し木霊する。
沙耶の呼吸が徐々に荒くなっていく。



あの時あんな事思わなければあの人はこんな事にならなかった。じゃあ、あの人がこんな事になったのは私の……私の所為!!



「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


沙耶は絶叫するとその場に倒れ、そのまま意識を手放した。
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